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大阪地方裁判所 平成12年(ワ)5792号 判決 2000年12月06日

原告

平川貴秀

被告

瀬渡耕一

ほか一名

主文

一  被告らは、原告に対し、各自、金九五一万八九一一円及びこれに対する平成一〇年一月七日から支払済みまで年五分の割合による金員を支払え。

二  原告のその余の請求をいずれも棄却する。

三  訴訟費用は、これを五分し、その二を原告の、その余を被告らの負担とする。

四  この判決は、一項に限り仮に執行することができる。

事実及び理由

第一請求

被告らは、原告に対し、各自、金一五七五万九九三一円及びこれに対する平成一〇年一月七日(本件事故日の翌日)から支払済みまで年五分の割合による金員を支払え。

第二事案の概要

一  争いのない事実等(証拠により認定した事実については証拠を掲記する。)

1(本件事故)

(一)  日時 平成一〇年一月六日午前〇時四〇分ころ

(二)  場所 大阪府豊中市蛍池西町二丁目一一番先路上

(三)  加害車両 被告瀬渡耕一(以下「被告瀬渡」という。)運転の普通乗用自動車(なにわ五五う七七二一)(タクシー)

(四)  被害車両 原告(昭和四六年四月一四日生、当時二六歳)運転の普通自動二輪車(一大阪ね八二八六)

(五)  態様 側面衝突

2(被告らの責任)

(一)  被告瀬渡 民法七〇九条

(二)  被告大阪山陽タクシー株式会社 自動車損害賠償保障法三条

3(原告の傷害、治療経過)(甲二)

(一)  傷害

左足関節内果骨折

(二)  治療経過

平成一〇年一月六日から平成一一年一一月一三日まで入通院

4(原告の後遺障害)(甲二)

平成一一年一一月一三日 症状固定

後遺障害等級一二級七号(左足関節の機能に障害を残すもの)(自動車保険料率算定会認定)

5(損害填補)

自賠責保険金 二二四万円

二  争点

1  原告の損害

(一) 慰謝料 四〇〇万円

(1) 入通院慰謝料 一〇〇万円

(2) 後遺障害慰謝料 三〇〇万円

(二) 逸失利益 一二五九万九九三一円

基礎収入 年五二八万八八〇〇円(平成一〇年賃金センサス高卒男子全年齢平均賃金)

労働能力喪失率 一四パーセント

就労可能年数 三九年(ライプニッツ係数一七・〇一七)

原告は、高校卒業後平成九年三月から岡山県において陶芸作家の助手として住み込みで修業しており、毎月決まった給与というものはない。

陶芸の先生から随時生活費を受け取っているが、それはいわばアルバイト料的な金額にすぎない。

原告の右のような収入状態は、助手の間のみのことであり、原告の健康状態、労働意欲からすると、逸失利益算定に関する基礎収入については、賃金センサスによる数値を用いるべきである。

(被告ら・本件事故直前三か月の原告の平均月収は一二万五〇〇〇円である。)

(三) 以上合計一六五九万九九三一円(既払額二二四万円)(残額一四三五万九九三一円)

(四) 弁護士費用 一四〇万円

2  過失相殺

(一) 被告ら

(1) 被告瀬渡は、一方通行の道路(阪神高速池田線側道大阪方面行き)を加害車両を運転して進行中、乗客の要求により高速道の橋脚の間を右折して高速道路下の空間地帯と本件道路を横切ろうとして、本件道路の直前で一旦停止して身を乗りだすようにして左方の安全を確認したところ、進行してくる車両がないので、本件道路に進入し、中央部分まで進行したところ、被害車両が横転したまま滑り込むようにして加害車両に衝突した。

(2) 原告は、普通自動二輪車を運転していたのであるから、できるかぎり道路の左側に寄って走行し、道路を横切る人車等の動静に注意を払い、折からの雨で路面が濡れて滑りやすくなっていたのであるから、いつでも停止できるように減速し、できるかぎり安全な方法により走行すべき義務があるのに、前方の注視を怠ったうえ、高速で進行したため加害車両の発見が遅れ、急制動をかけたときおそらく急制動と路面が濡れていたためスリップして左に横転し、そのまま人車とも道路上を滑走して加害車両左側面下部に衝突した。

傷害の部位から、原告が本件衝突の直前に左に横転して道路を滑走したときに生じたものと思われる。

(3) 被告瀬渡が本件事故直後車両を降りて原告を抱きあげた時、原告にはアルコールの臭いがした。

(二) 原告

(1) 原告は、中国自動車道に入ろうとしていたため三車線のうちの第二車線を走行していたものであり、本件事故現場で左側に寄っていては、中国自動車道には入れなくなる。

(2) 雨は降り始めで、本件事故時、路面はあまり濡れていなかった。

(3) 原告は、信号待ち停止後発進したばかりであったから、速度はそれほど出ていなかった。

(4) 原告は、本件事故当日飲酒はしていない。

第三判断

一  争点1(原告の損害)

1  慰謝料 三六〇万円

(一) 入通院慰謝料 一〇〇万円

原告の傷害の部位、程度からすると、入通院慰謝料は一〇〇万円と認めるのが相当である。

(二) 後遺障害慰謝料 二六〇万円

原告の後遺障害の内容からすると、後遺障害慰謝料は二六〇万円と認めるのが相当である。

2  逸失利益 八五七万六五六八円

証拠(乙一、原告本人、弁論の全趣旨)によれば、原告(症状固定時二八歳)は、平成九年三月一日から陶芸作家の和仁栄幸のもとで助手として陶芸家となるべく住み込みで修行しており、本件事故当時月額一二万五〇〇〇円(年一五〇万円)の収入があったこと、平成一二年八月末ころからは独立資金捻出のために松元工務店で型枠大工として勤務し、同年九月は約二四万円の賃金を得たことが認められる。

右の事実によれば、原告の逸失利益を算定するに当たり、平成一〇年賃金センサス高卒男子全年齢平均賃金年五二八万八八〇〇円の収入を得られたであろう蓋然性を認めるまでには至らない(平成一〇年賃金センサス高卒男子二五ないし二九歳の平均賃金は年四〇五万一八〇〇円である。)が、年三六〇万円(月額三〇万円)の収入を得られたであろう蓋然性は認められるというべきである。

そこで、原告の逸失利益の現価を、労働能力喪失率一四パーセント(後遺障害等級一二級)、就労可能年数六七歳までの三九年(ライプニッツ係数一七・〇一七)として、計算すると、次の計算式のとおり八五七万六五六八円となる。

360万円×0.14×17.017=857万6568円

3  以上を合計すると、一二一七万六五六八円となる。

二  争点2(過失相殺)

証拠(甲三、四の1、2、原告本人)によれば、次の事実が認められる。

1  本件事故現場の状況は、別紙交通事故現場見取図記載のとおりであり、阪神高速池田線の高架を挟む南北方向の大阪池田線(北行三車線)(以下「本件道路」という。)であり、最高速度は時速六〇キロメートルに規制されていた。

2  原告は、被害車両を運転して、本件道路を南から北に向かい前照灯を点灯して、第二車線を時速四〇ないし五〇キロメートルで走行し、高速道路の高架の間から進路前方に右折進入してきた加害車両を衝突直前に発見し、制動措置を講ずるも間に合わず、加害車両右側面(後部ドア付近)に被害車両前部を衝突させた。

3  被告瀬渡は、加害車両を運転して本件道路南行車線を走行し、北行車線に進入すべく、高速道路の高架の間で一時停止後、北行車線に右折進入したが、同道路を進行してくる被害車両に気付かず、時速約一五キロメートルで右折進入し、被害車両の進路前方に加害車両を進出させ、加害車両右側面に被害車両前部を衝突させた。

被告瀬渡は、右衝突まで被害車両の存在に気付いていなかった。

以上の事実が認められ、これを覆すに足りる証拠はない(なお、原告が本件事故当時飲酒していたことを認めるに足りる証拠はない。)。

右に認定の事実によれば、本件事故発生の主たる原因は、被告瀬渡の北行車線を進行している車両の動静に注意し、その走行を妨害しないようにすべき注意義務に違反した過失にあるが、一方原告にも、高速道路の高架のために見通しが悪かったとはいえ、前方を注視していれば、右折進入しようとしていた加害車両の存在に気付き得たものと考えられ、この点において過失があるというべきである。

以上の事実を総合考慮すると、本件においては、前記損害額からその一割を過失相殺するのが相当である。

そこで、前記損害額一二一七万六五六八円からその一割を控除すると、一〇九五万八九一一円となる。

三  損害填補(二二四万円)

自賠責保険金二二四万円が既に支払われているから、これを前記一〇九五万八九一一円から控除すると、八七一万八九一一円となる。

四  弁護士費用 八〇万円

本件事故と相当因果関係の認められる弁護士費用は八〇万円と認めるのが相当である。

五  よって、原告の請求は、九五一万八九一一円及びこれに対する本件事故の日の翌日である平成一〇年一月七日から支払済みまで民法所定の年五分の割合による遅延損害金の支払を求める限度で理由がある。

(裁判官 吉波佳希)

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